母の愛情に賞味期限はない

 いつ帰ってきてもいいようにと、買い物に行くたびに毎回練りものを買い、2週間刺身に手をつけないまま、息子のことを思い、冷蔵庫で保存してくれていたお母さんがそこにいたのです。

 かまぼこに賞味期限はあっても、愛情に賞味期限はありません。

 現実問題としては、買い物の日を決めて、買い物リストを一緒につくり、買い物の前には冷蔵庫の中を一緒に片づけるなどの対応が必要かもしれません。

 でも、不可解で奇抜に見える行動には、理由がある場合があります。

 認知症になった家族にイラッとし、思わず責めてしまいそうになったら、一度落ち着いて、「なぜそうしたのか?」に思いを馳せてみてください。

 その背景にある認知症の人の思いに触れると、沈みがちだった暗い気持ちがほっこりと温かくなり、一気に晴れ上がることがあります。

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川畑 智

川畑 智

かわばた・さとし/理学療法士 熊本県認知症予防プログラム開発者 株式会社Re学代表。1979年宮崎県生まれ。理学療法士として病院や施設でリハビリに従事した後、2015年に株式会社Re学設立。熊本県を拠点に病院・施設における認知症予防や認知症ケアの実践に取り組む。

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