パリ五輪でメダルが期待される玉井陸斗
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 選手本人の夢でもあるが、日本の飛込競技関係者全員の悲願でもある、五輪という大舞台でのメダル獲得。それに今、最も近いところにいるのが、玉井陸斗、17歳である。

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「日本の飛込選手で、五輪メダリスト第1号に自分がなれるように、最大限の努力をしてパリ五輪を迎えたいと思います」

 ハッキリと、真っすぐに話せる根拠は、十分にある。

 今年5月、パリ五輪の会場であるOlympic Aquatics Centerで行われた、フレンチダイビングオープンという大会に参加。各国のトップ選手たちも参加する中、玉井は男子高飛込で金メダルを獲得。特筆すべきは、ただ単に国際大会で優勝したというだけではなく、東京五輪の同種目で金メダルを獲得した中国の曹縁を破っての勝利だったことだ。

 曹縁も今年で29歳。2012年のロンドン五輪で初めて金メダルを獲得して以来、かれこれ10年以上も世界のトップで活躍してきた大ベテラン選手である。その技量は確かだが、残念ながら多少の衰えは見えている。とはいえ、飛込界を席巻する中国にあり、水しぶきを上げない入水技術は天下一品。その曹縁に対して堂々と渡り合い、優勝を勝ち取ったことは玉井にとって大きな自信を植え付けることとなった。

 2022年のFINA世界水泳選手権ブダペスト大会の男子高飛込で銀メダルを獲得し、そのまま世界のトップへの階段を駆け上がっていくものだと、誰もが思っていた。きっと、玉井本人もそう思っていたのだろう。2023年、22年ぶりに福岡で開催された世界水泳選手権2023福岡の事前インタビューでは「前回は銀メダルに“終わってしまった”ので、今回は金メダルを狙いたい」と話していたほどだ。

 しかし、現実は厳しかった。大会直前から腰痛が発症。大会が進むにつれて症状は改善するどころか悪化していく。練習どころか、普段の生活すらままならないような状態に陥ってしまう。

 だが、この福岡の世界水泳選手権で、パリ五輪の出場権が懸かっていただけに、玉井はなんとしても飛びたかった。

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