玉井がメダル獲得のために得点を伸ばすカギは、2ラウンド目に飛ぶ207B(後ろ宙返り3回転半エビ型)という技だ。玉井は後ろ向きに宙返りをする種目に、どうしても苦手意識がある。もう一つ、後ろ向きに宙返りをする種目があって、それが307C(前踏み切り後ろ宙返り3回転半抱え型)である。このふたつは、後ろ向きに宙返りをして、最後は背中を反らせるようにして入水する種目。いわゆる「後ろ入水」の安定感が、ほかの種目に比べると格段に低い。玉井本人も「207Bさえ決めることができれば、あとは波に乗っていけると思う」と言うほど、結果を大きく左右する重要なファクターなのだ。

 さらに、玉井はフレンチダイビングオープンで、国際大会では自身初となる500ポイントオーバーの得点を獲得できた。それも玉井の大きな自信となった。

 過去の記録を見返してみると、2023年の腰痛を抱えていた世界水泳選手権を除き、国際大会では右肩上がりで得点を伸ばし続けている。インタビューの受け答えや、その結果からもうすでにベテランのようにすら思えるが、玉井はまだ17歳。今年高校3年生になったばかり。

 日本が1932年のロサンゼルス五輪に初めて出場して以来、最高は4位。玉井は、これまで何度もこの“初”を塗り替えてきた。最年少記録、男子高飛込での世界水泳選手権初のメダル獲得。日本人初の500ポイント超え。そして今回、パリ五輪では悲願の“初”の塗り替えに挑む。飛込界のレジェンド・寺内をもってして「陸斗は天才的」と称するほどの逸材。パリ五輪ではきっと大仕事をやってのけてくれるに違いない。(文・田坂友暁)
 

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