TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽や映画、演劇とともに社会を語る連載「RADIO PAPA」。今回は映画「バティモン5 望まれざる者」について。

バティモン5で働くアビー(右:アンタ・ディアウ)が、仲間のブラズ(左:アリストート・ルインドゥラ)と談笑する様子
「バティモン5 望まれざる者」
新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開中
© SRAB FILMS - LYLY FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE – 2023
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 開催まで1カ月を切ったパリオリンピック。セーヌ川で行われる開会式では、史上初めて船で選手入場が行われるという。先の東京五輪の閉会式ではエッフェル塔の上をジェット戦闘機が色とりどりのスモークを吐きながら誇らしげに飛んだのを覚えている。

 五輪の理念は「広く開かれた大会」だが、いやが上にもナショナリズムが高まるのはオリンピックの常。そして、総選挙では移民に不寛容な極右勢力(国民連合〈RN〉)の優勢も伝えられるのが気がかりだ。そしてもう一つ、フランスの「分断」をイメージする映画も公開されている。

「バティモン5 望まれざる者」は、旧植民地出身の移民や低所得者が住むパリ郊外の10階建ての団地の出来事を描いている。

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立ち上がる移民2世の女性