しかし、金利のある世界では違う。例えば同じ預金でも、普通預金と定期預金の利子の差はもっと大きくなる。リポートによると22年度時点で普通預金と10年物定期預金の利子の差は0.4%程度だが、26年度には2%程度に広がる。

 預金だけでもこれだけの差がつく。国債のほか、株式や投信などほかの金融商品に目を向ければその差はもっと広がることになる。

 中信さんは続ける。

「金利のある世界では、物価高も進む前提です。インフレで企業の業績がよくなり、給料も上がりやすくなりますが、モノやサービスの値上がりも進み、暮らしにかかる支出も膨らみます。金融資産から得られる利子が増えるといっても、その伸び率が物価の上昇率を下回るなら、資産から得られる収益は目減りします。その意味でも、どんな金融資産を選ぶかが大切です」

 金融資産と負債のバランスを考えることも重要だ。例えば、住宅ローンを借りて家を建てる際、頭金を多くして返済期間や残債を小さくしようと考える人もいるだろう。

 このとき、どんな資産を頭金に充てるかで金利上昇の影響も変わってくる。利子や配当が多くもらえる金融資産をたくさん取り崩してしまえば、金利の上昇で得られるはずのメリットもその分減る。ローンの残債は確かに減らせるかもしれないが、もらえるはずの所得がローンの減少分を上回るようなら、本末転倒だ。

 メリットとデメリットをよく見極め、どんな資産をどれだけ使うかを考える必要がある。

「『金利のない世界』になってから20~30年が経ち、金利のある世界を経験したことがある人は少なくなりました。特に資産形成が十分に進んでいない20~40代の層は、ほとんど経験がないでしょう。これからは資産形成について自分で学んだり、金融に関する教育環境を整備したりすることがより重要になると思います」(中信さん)

(AERA dot.編集部・池田正史)

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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