ところが、徐々に変化が起きている。東急電鉄は5月15日から、世田谷線を除く東急線全駅でタッチ決済乗車に対応した改札を設置、後払い乗車サービスの実証実験を開始した。

 他にも、東京メトロ、都営地下鉄、京浜急行電鉄、西武鉄道、ゆりかもめ、横浜市営地下鉄、江ノ島電鉄等で、タッチ決済乗車の実証実験の開始あるいは開始予定が続々と発表されている(一部駅のみの場合あり)。

 首都圏だけではない。名阪では近畿日本鉄道、名古屋鉄道、阪急電鉄、阪神電車、大阪メトロ等での実証実験が開始予定だ(南海鉄道はすでに対応済み)。Visaによると、同ブランドのタッチ決済乗車は2023年12月現在で28都道府県55プロジェクトと急速に拡大しているという。

やがて来る、交通系ICカードが使えない日

 カード会社側はタッチ決済乗車をアピールするためのポイント加算やキャッシュバックキャンペーンを打ち出した。JCBはタッチ決済対応マークのあるカードもしくはApple Pay対応のiPhoneなどで対象の公共交通機関を利用すると、利用合計金額の50%(上限500円相当)をキャッシュバックするキャンペーンを5月26日まで行った。

 東急カードは「電車とバスで貯まるTOKYU POINT」に登録したTOKYU CARDでタッチ決済乗車をすれば、乗車ポイントが3%たまる。6月2日まではポイント2倍の6%還元で利用を促した。

 今後、実証実験がスタートする首都圏私鉄・地下鉄でも、同様のキャンペーンが行われるだろう。カード発行会社にとってもメリットは大きい。

 カードといえば高額なものを買うイメージがあるが、公共交通機関で日常的に利用してもらえるなら、積極的にタッチ決済乗車をアピールしたくなるというもの。乗車分の利用額がまるごとポイント還元対象になるかはカード会社ごとの判断になるだろうが、ポイ活好きの間で注目を集めそうだ。

 とはいえ、首都圏の交通網は交通系ICカードががっちり押さえている。JRグループでタッチ決済乗車に対応しているのはJR九州のみ。勝ち目はあるのか、と首を傾げる声もあるだろうが、そこに衝撃的なニュースが飛び込んだ。

 熊本県内で路線バスや鉄道を運行する5つの事業者が、全国交通系ICカードによる決済を年内にも停止し、クレジットカード等のタッチ決済を導入する方針を決めたという。理由は読み取り端末のコスト。現在多く使われている地場限定「くまモンのIC CARD」とタッチ決済に対応した機器に更新すると、現行端末を更新する費用に比べて約半分で済むとか。

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