企業に声を届ける動きもある。重い嚥下障害の子どもがいる親たちの交流サークル「スナック都(と)ろ美(み)」のメンバーは、常時さまざまな「課外活動」を展開。その一つが冒頭のインクルーシブ食のメニュー開発だ。また、食品メーカーや外食産業にも「啓発の機会になるならどこへでも」と積極的に協力を求めていく。

 21年のイベントでは、虎屋がインクルーシブ食として開発した羊羹(ようかん)「ゆるるか」を協賛品として提供してもらった。同社商品開発プロジェクト担当の五十嵐歩さんは、こう振り返る。

「我々は、ご高齢のお客さまへ、かめなくなった先の商品として開発していたのですが、目からうろこで。お子さんの食で困りごとを抱えている親御さんの生の声が聞けて、今後は真の意味でユニバーサルな商品として届けていこうと、商品の見え方が変わりました」

 また、「都ろ美」の声から、スープ専門店「スープストックトーキョー」も連携。ルミネ立川店で、22年から、マッシャーなど調理器具の貸し出しを始めた。親子が、障害の状態に合わせて外食を楽しむための試みだ。「都ろ美」を運営する永峰玲子さんはこう話す。

「普段、オンラインを中心に参加者が抱えるお悩みを聞いたり、情報交換をし合うおしゃべりの場が『スナック活動』。そこで拾い集めた声が、企業さんにも届き始めているのが嬉しいですね。私たちは、やわらかく、楽しく社会とつながっていきたいんです」

(ジャーナリスト・古川雅子)

AERA 2024年6月24日号より抜粋

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