「丸飲み?カツカレー」は京都府宇治市のカフェの人気メニュー。「形あるものをみんなと食べたい」という介護現場の声から考案された(写真:みんなのカフェぐりぐり提供)
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 障害や加齢によって、食べ物をかんだり飲み込んだりすることが難しい人がいる。食の楽しみが減って必要な栄養がとれなくなったり、外食や旅行をあきらめたり。そんな中、当事者や家族の声を受けて、企業や飲食店が食事支援に力を入れ始めた。AERA 2024年6月24日号より。

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 食べ物を飲み込む嚥下(えんげ)能力に応じた配慮食づくりは、在宅の場合は家族が自己責任のもと行う。それを自助努力だけで担うのは、荷が重い。日常で取り入れられる食材も限られているのが現状だ。一方で、病院介護施設にいる医療や栄養の専門家らは、社会にその知見を伝えきれていないもどかしさを抱えている。

 ニーズがある家族と、専門家の知見とを、どう結びつけていけばよいか──。そんな課題意識から、カフェやレストランの試みが全国各地に広がる。専門家がアドバイスしたり、自らが運営者となったりして特別に配慮する食事のメニューを提供する。

 最もインパクトがあったメニューが、「丸飲み?カツカレー」だ。NPO法人おはな(京都府宇治市)が運営する「みんなのカフェぐりぐり」で提供。かみやすさごとに段階的にメニューを作った。同法人理事で言語聴覚士の高田耕平さんが、種明かしをしてくれた。

「食べ物って、軟らかいだけだと病人食になってしまう。見た目に美味しいというのも重要です。だから、ごろっとしたカツがのるカレーにしようと」

 これが食べたいと、鹿児島や東京からも障害がある当事者が食べにきた。「丸飲み」を食べたある老夫婦は、3年ぶりの外食で食欲を取り戻した。その様子を目撃した高田さんは振り返る。

「女性はご高齢で、看取りと言われていた。あまり食べられなくなっていたんですが、外食となると気持ちが『食べたい』と前向きになったのか、自らさじを持って食べ始めたんです」

 細かいカッティングや圧力、蒸気の力を使う専用調理器で、舌でもつぶせるやわらかさを実現。それでも、食品は不均一なところが残る。そこで高田さんは、簡易な硬さ測定器を発明して、「食べる前に測って食べられる硬さの部分を食べてもらう」スタイルを導入した。この硬さ測定器は、各地の配慮食レストランに導入されている。

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