病院に救急搬送される患者。救急車の適正な利用は社会課題だが、「緊急」の判断に困る一般人は多い(写真映像部・松永卓也)
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 救急車の適正な利用は社会課題だ。不適切利用が問題になるなか、救急車を呼ぶべき緊急性の高い症状の判断は一般人には難しい。どうすれば、「手遅れ」を防ぐことができるのか。

【データで見る医師のホンネ】救急車「有料化すべき」に9割が賛成の理由とは

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血を吐いて「大丈夫だって!」

 埼玉県在住の70代男性は、昨年暮れの土曜日の正午ごろ、トイレに立って吐血した。1回、2回と血を吐いて、めまいがしたので横になった。

 家人に「どうかした?」と尋ねられ、「ちょっと血を吐いた」。過去にも血を吐き、入院したことがあった。胃潰瘍だった。その時よりは出血量は少なかった。

「大丈夫?」「大丈夫だよ」「救急車、呼ぼうか?」「大丈夫だって!」

 そんなやりとりを何度かした。起き上がるとふらつきがあり、横になったまま、うつらうつらして過ごした。

 夜になって、たまたま実家を訪ねてきた娘が救急車を要請した。23時を過ぎていた。

「実家に行ってから救急車を要請するまでに、30分以上かかりました。『夜遅いからもういい』とか、『大丈夫だ』の一点張り。母も『明日にすれば』と言うし、結局、かかりつけの病院の救急窓口に相談してから、救急車を要請しました」(男性の娘)

 血圧は低く、搬送先でそのまま入院。吐血は胃の潰瘍からの出血が原因で、止血手術を行った。大動脈瘤で手術歴があり、 抗血栓薬を飲んでいたため、血が止まりづらくなっていた。

救急搬送をためらうことで問題

 昨今、有料化が話題になっているように、救急車の適正な利用は社会課題だ。医師専用サイト「MedPeer(メドピア)」が会員医師2500人に対して行ったアンケートでも、「一律に有料化すべき」「入院や緊急処置など例外(主に重症)を除き有料化すべき」と答えた医師が計9割にも上った。

 だが、一般人にしてみれば、救急車を呼ぶべきか判断に悩むケースは多い。

 アンケートで有料化に賛成する医師たちも、「救急搬送をためらうことでの問題もあります」(勤務医、神経内科、40代、男性)「自分の症状がどの程度かわからなくて不安になる患者の心理もわかる」、(勤務医、リハビリテーション科、30代、男性)などとコメントしている。

 どんな症状の緊急性が高く、どんな症状であればそうではないのか。

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