浅田真央

 タップダンスはもちろん、この公演のために取り組んだエアリアルや陸ダンスでも、浅田から伝わってくるのは「やるからには徹底してやる」姿勢だ。アマチュア時代から変わらないストイックさは、プロとなった今は自ら選択して挑んでいるからこそ、より強い意志を伴っているように感じる。

 そしてショーの終盤、浅田は『ボレロ』を滑った。SNSでのファン投票で「滑ってほしい曲」の1位だったという名曲を、自らと姉・舞の共同振付で演じる。スポットライトに照らされて浅田が浮かび上がる冒頭から、この演目では瞬きできないと感じさせた。

 浅田がアマチュア時代に滑ったエキシビションナンバーの傑作『チェロスイート』は、フィギュアスケートの基本であるコンパルソリーの動きを芸術的に昇華させていた。この『ボレロ』の冒頭でも、浅田はコンパルソリーの動きをみせている。可憐だった『チェロスイート』に対し、この『ボレロ』では33歳ならではの成熟した深い滑りを披露すると共に、再びフィギュアスケーターとしての原点に立ち返った感がある。『ボレロ』での浅田は、フィギュアスケートの真髄を体現していた。

 ゴージャスなショーの最後を飾る曲『ローズ』が流れると、会場には薔薇の花びらが降り注いだ。

 新たな挑戦を恐れず、同時に生粋のフィギュアスケーターとして存在し続ける浅田真央は、精魂込めて創り上げた「everlasting33」により、アイスショーを舞台芸術の一分野として確立させた。(文・沢田聡子)

沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。フィギュアスケート、アーティスティックスイミング、アイスホッケー等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。2022年北京五輪を現地取材。Yahoo!ニュース エキスパート「競技場の片隅から」
    

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