もちろんすべてのアーティストの大ファンで、作品も聴き込んでいる。めちゃくちゃ好きだからこそTシャツが欲しかったし、着ているだけで気分が上がった。
私が着ているTシャツを見た人から「デヴィッド・ボウイ、好きなんですか?」などと聞かれるのも楽しく、ミュージシャン取材の現場で話が盛り上がることもある。つまりバンドTシャツを着ることは自分の好みの音楽をアピールすることにつながるし、コミュニケーションのツールでもあったのだ。学生の頃、UKのバンド“ザ・シャーラタンズ”のTシャツを着て授業に出席し、外国人の英語の教師に“Are you charlatan?(詐欺師)”とからかわれたのも今となっては良い思い出だ。当時はイラっとしたが。
レジェンド的なロックバンドの多くは、ビジュアルやアートワークも魅力的だ。それをTシャツのデザインにしているのだから、カッコいいに決まっているし、“オシャレだから着ているだけ”というのも理解できる。理解はできるのだが、“自分が着ているTシャツのバンドが、どんな音楽をやっているのか気にならない?”と言いたくなるのだ。どうしても。だって、そのバンドの音楽が好みじゃなかったらどうすんのよ? 歌詞の内容にまったく共感できなかったとしたら? そんなTシャツ着ているのはイヤじゃないですか? 逆に、Tシャツのバンドが実際にカッコ良かったらテンション上がらない?
もちろん「そんなこと気にしない」という人もいるだろうし、そういう人のほうが大多数なのだろうが、個人的には“せめて自分が着ているTシャツにプリントされているバンドのことくらい知っていてほしい”と思う。そうやって興味を広げることはまちがいなく日々を豊かにするし、何より楽しいじゃないですか。もっと言えば、自分が着ているもの(あと、持っているものや食べるものなど)に関心を持つことは、日々をよりよく生きるための大切な要素だ。
というわけで、膨大な数のバンドTシャツのなかから、筆者が勝手に選んだ“着ている人がバンドの曲を知らない率”が高いであろう二つのバンドを紹介したい。