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 いま、「医療AI」の社会実装が少しずつ進んでいる。先行するのは画像診断支援ソフトウェアだ。今後は医療もAIなしには語れないという。AERA 2024年6月17日号から。

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写真:AIメディカルサービス提供

 内視鏡検査を進める医師が機器のフリーズボタンを押すと、人工知能(AI)による解析が始まった。

「Consider biopsy(生検を検討)」

 画像の一部が矩形で囲われ、注意喚起が表示された。

 AIメディカルサービスが開発した「gastroAI model-G」は、内視鏡検査中にAIが病変候補を検出・通知する画像診断支援システムだ。ソフトウェアを搭載したパソコンと内視鏡を接続して使う。医師は通常の方法で内視鏡検査を進め、疑わしい箇所を見つけたらボタンを押して動画を静止。AIがその画像を解析し、「詳しい検査を検討すべき」と判断した場合に、冒頭のように注意喚起を表示する。2023年12月に医療機器の製造販売承認を受け、今年3月に発売された。

専門医と同等のレベル

AERA 2024年6月17日号「医師676人のリアル」特集より

 同社代表の多田智裕さんは東京大学病院などで勤務後、さいたま市にクリニックを開院した内視鏡医だ。16年、人工知能研究者の講演で「AIの画像認識能力が人間の能力を超えた」ことを知り、衝撃を受けた。

「初期の胃がんは内視鏡医でも見つけるのが難しい。自治体検診では見逃し防止のため、検査画像を医師会に集め、外来終了後に毎日、数千枚をダブルチェックする仕事がありました。その負担を軽減できないかと考えたのが起業のきっかけです。また、普段の診療でもAIが専門医並みのレベルでダブルチェックしてくれれば、見逃し防止、医師の精神的な安心感の担保につながります」

 gastroAIは、がん研有明病院、東京大学病院など国内有数の医療機関から提供を受けた画像を学習しており、既に感度(病変を正しく病変と判定する確率)は専門医を有意に上回る。特異度(病変でないものを正しく病変でないと判定する確率)はやや下回るものの、トータルの精度で「専門医と同等のレベル」に達しているという。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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