2020年7月にレジ袋が有料化されてマイバッグが普及したが、CO2排出量を考えると1個あたり50~150回使わないと元が取れないという(撮影/写真映像部・馬場岳人)

CO2を多く出すのは?

 このように、「いったい何が問題なのか」という議論が煮詰まらないまま、「何かやらなくては」が先立って、わかりやすい紙ストロー化の波が押し寄せたというのが、中谷さんの見立てだ。

 そうは言っても、同じストローでも紙とプラ。原料調達から廃棄までストローの一生で考えると、プラ製のほうが環境負荷は高そうだが。

「それが、調査によっては、プラストローより紙ストローのほうが、CO2を多く出すという結果もあるのです」(中谷さん)

 例えば22年に発行されたアメリカの報告書では、廃棄後、焼却処分する場合で比べると、紙ストローのCO2の排出量はプラストローの約1.4倍、埋め立て処分する場合で比べると3.1倍ものCO2が排出される結果となっている。というのも、重量があるものは生産する際にCO2を多く出すから。軽いプラストローのほうが、2倍くらい重い紙ストローより環境にはいいと考えられている。

 そして中谷さんが、「もっとも悪くない選択」と言うのが、紙でもない、プラでもない、植物由来の素材を使うバイオマスプラのストローだ。前のアメリカの論文では、排出するCO2は、紙ストローのわずか33%程度(焼却処分される場合)。原料が植物というだけで、太さも飲み心地も、機能ではほぼプラストローと同じとなっている。

そっくりなのが難点

 ただし、紙ストローに比べて、爆発的に普及した感じがしないのがこのバイオマスプラストロー。機能も見かけもプラストローそっくりなところが、今はかえって世に広まる足を引っ張っているところもあるようで。

「普通のプラだと思ってバイオマスプラのストローを使っている人は多いと思いますよ。それだけ、紙ストローほどのインパクトはない。太いとか、紙の味がするとか、やはり何か不便さがないと、逆に伝わらないところもあるのでしょう」(中谷さん)

 紙ストローは消費者を啓蒙(けいもう)する役割は果たしてきたが、環境を考えるなら、「今のところバイオマスプラだと思います」(同)。

 こうして私のようなミーハーが、ウミガメさん頑張って!などと妄想しながら、あのぶっとい紙ストローを口にしているうちに、世界はどんどん進んできているらしい。例えば欧米ではバイオマスプラストローなどの原料になる植物が、食品となる植物と競合しないかなどの議論も始まっているそう。

 エコバッグも、レジ袋に比べて布を織るという作業に多くのCO2が出るため、実は少なくとも50~150回は使わないとCO2の元が取れないという。エコバッグでも踊らされ、またしても紙ストローでも踊らされ、「2周も3周も」後れを取っているという日本。ミーハーなんで、悔しいんですけど。(ライター・福光恵)

AERA 2024年6月10日号より

AERA 2024年6月10日号

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