吉田サム氏(本人提供)

 ふてぶてしい態度をとって嫌われたり、刑務官に悪事を告げ口したり、様々な理由によって“死のゴーサイン”が出された囚人は、部屋の片隅でリンチされる。吉田氏は、その生々しい実態を明かす。

「人だかりの奥から、ドスッドスッと肉を殴る音や、口をふさがれてモゴモゴうめく声が聞こえるんですよ。様子を見に行こうとしたら、普段はニコニコしている黒人の長老に、怖い顔で『Don’t!』と制されてね。5~6分後、物音がしなくなると、手を真っ赤に腫らした白人の男が『Fuck You』と吐き捨てながら出てきました。次の日、リンチされた囚人の姿はなかったので、ひっそり闇に葬られたのでしょう」

血管に刺してあえぎ声をあげながら

 刑務所内では薬物も蔓延(まんえん)していた。吉田氏のベッドの下段にいた囚人は、ヘロインの入った注射器を腕の血管にグリグリと刺してあえぎ声をあげながら、「Do you want?」と勧めてきたという。針は囚人同士で使いまわしているため、肝炎のリスクもある。吉田氏は「I wanna be a human(俺はまだ人間でいたい)」と丁重にお断りした。

 一体、囚人たちはどこから薬物を手に入れるのか。不思議に思って黒人グループの長老に尋ねると、「知らないほうがいい」と返ってきたというが、吉田氏はこう推測する。

「アメリカの刑務官は給料が安いので、囚人に買収されている人はいっぱいいると思う。刑務所に出入りする業者が、パンの袋なんかにしのばせて運んでくるケースもあるでしょう」

 もう一つ、囚人たちの楽しみとして横行していたのがギャンブルだ。房内は常にテレビがついており、みんなスポーツの試合を見ながら賭け事に興じる。といっても刑務所で現金は使えない。賭けるのは「Maruchan」。日本でもおなじみの即席ラーメンだ。

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なんでもありの囚人社会で生き抜くためには「うまい立ち位置」を確立すること