「隣町に行かないと野球もできない社会」で本当にいいのか

 面白いと思ったのは、公園でボール遊びが禁じられている近隣の地域に住む子供たちの中には、その地域のチームに入るのではなく、伸び伸びと練習できる吉川市にあるチームまで通う子供もいるということ。やはり子供たちには伸び伸びと体を動かしてほしいと願う保護者が多いということでしょう。

 ボール遊び禁止というルールは大人が作ったもの。それぞれの公園や地域で事情はあるでしょうが、一律に禁止してしまうのではなく、子供の未来を思いながら妥協点を探っていくのも大人の役割でしょう。

 吉川市の例を考えると、行政と協力しながら環境を整えていくのも一つの方法です。公園で安全にボール遊びをするためのルールを考えてみたり、小学校や中学校のグラウンドをボール遊びのために開放する時間を設けたり。

 どの自治体にも必ず、使われなくなったまま放置されているスペースは一つや二つあるものですし、少子化の影響で統廃合される小中学校も多いと聞きます。僕も野球教室や講演活動などで訪問する自治体に働き掛けながら、野球ができる場所、ボール遊びができる環境を整える活動に取り組み続けたいと思います。

プロ野球と子供たちのつながりはもっと多くていい

 野球ができる環境を提供するという点では、プロ野球界の積極的な関わりにも期待したいところです。ナイターであれば試合前、デーゲームであれば試合後など、親子でキャッチボールを楽しめるように球場を開放する球団が増えてきました。

 ロッテでは社会貢献活動の一環として「マリーンズ・キッズボールパーク」と題し、未就学児から小学6年生までを対象としたボール遊びイベントを開催しています。2022年にはシーズン中に7日間開催されましたが、個人的にはもっと回数を増やしてもいいのではないかと感じています。

 子供たちにとってプロ野球選手と同じグラウンドに立てることだけでも特別な体験になるでしょう。そういった特別だったりうれしかったり、心に残る体験を積み重ねることで、野球への愛着は増していくのだろうと思います。

 僕が監督2年目だった2019年には、ZOZOマリンスタジアムの外周スペースに子供たちがキャッチボールを楽しめる「マリンひろば」がオープンしました。球場と同じ人工芝が使用されているフィールドですが、低学年までの子供たちが遊ぶにはちょうどいい大きさ。本音を言えば、高学年の子供たちも遠慮せずにキャッチボールできるようなスペースをもう一つ作ってあげられればなお良かったでしょう。

 ただ、こうした小さな努力の積み重ねが、子供たちが野球と触れ合う機会を生み、野球をもっと好きになるきっかけにもなります。プロ野球12球団、あるいは日本プロ野球選手会、日本プロ野球OBクラブなどが率先して、野球がすぐそこにある日常が生まれるよう取り組みを続ければ、きっと野球の魅力は子供たちの心にも伝わるでしょう。

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