公開中の『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-」で主人公、凪 誠士郎を演じる名声優・島﨑信長さん(撮影/加藤夏子)

 難しいことが楽しい

島﨑 役者は、基本的にはみんなエゴが強いと思う。だから、基本的にはどんな役を任せてもらっても、まず素直にワクワクするし、「うれしい」と感じます。

 難易度が高かったり、演じるまでに準備をたくさんしなければいけない役もあります。例えば、黒幕のようなキャラクターを演じる場合、考えることは増えます。

 以前、登場人物全員が遭難するが、僕が演じるキャラクターだけがすべてを知っている、という設定の作品がありました。終盤まで知っていることをおくびにも出さず、計算が乗りすぎず、でもどこかで装っているところもある……。難しかったですが、マイクの前で感じながら演じるのは、やっぱり楽しかったんです。

──声優の一番の醍醐味とは? そう尋ねると、少し間を空けて、熱く語ってくれた。

嘘を本当に感じさせる情熱

島﨑 僕は小学生の頃からアニメが大好きです。

 アニメはフィクションやファンタジーの部分が多い分、その「嘘」を本当に感じさせるだけの情熱が働いているんです。子どもの頃、空を飛ぶことを想像したり、自分がサッカーのスーパープレーをするところを想像したりしますよね。

 アニメは、たとえば実現不可能なことでも、それをいかにその世界で「本当」にしていくかに全員が本気で取り組んでいる。その世界の中でのリアリティーを突き詰めて、その世界を本物にしていく作業があるんです。

 実写作品なら、表情、所作、造形、声、動き、すべてを俳優さんが担当しますが、アニメの場合、声優は声だけ。ですが、声優にしかできない表現があります。だからこそ、各分野の尖ったエゴを持ったプロフェッショナルたちがコミュニケーションをとって、時にぶつかり合ったり、馴染ませたり、高め合ったりしながら、ひとつの作品を作っていく。その過程が僕はすごく好きなんです。

──「フェア」であることも声優の醍醐味だという。

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