勝つことや記録を出すことを目的に、過度な減量を続ける若い選手たちがいる。無理を続ければ、心身に支障をきたすのはもちろん、女子の場合は無月経に陥るケースもあるという。AERA 2024年5月27日号より。
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日頃、ジョギングや球技をしたり、学生時代には運動部でスポーツに打ち込んだりという人もいるだろう。多くの人が触れたことのあるスポーツ。その基本理念を定める「スポーツ基本法」には、こう記されている。
〈スポーツは、心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動であり、今日、国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠のもの〉
つまり、豊かで健康な生活を送るためのツールのひとつとしてスポーツがあるはずなのだが、若年層の部活動においては長年、その逆方向に進んでいるかのような傾向があった。学校や競技団体という“閉ざされた世界”の実態に警鐘を鳴らす動きが広がっている。
ランニング学会理事長で、2000年のシドニー五輪女子マラソン金メダリスト・高橋尚子さんを大学時代に指導した経験のある大阪学院大学の山内武教授は、こう指摘する。
「勝つこと、記録を出すことが第一の目的で、健康をそれほど意識しない風潮が一部中高生などの若い選手の間にも蔓延しています。大学への推薦を取るために、ある程度無理をすることは致し方ないという価値観もあると思います。ただ、体ができあがっていない時期に無理を続ければ、一生健康を害することにつながる。それが今、度が過ぎているのではないでしょうか」
山内教授によれば、長距離走のパフォーマンスには有酸素性パワーが大きく影響する。その指標は、1分間に体重1キロあたり取り込むことができる“最大酸素摂取量”だ。