高校3年間、ほとんど月経はなかったが、疑問に思うことはなかった。

「血も出ないし、おなかも痛くならない。競技をするうえでは生理がないほうが得くらいに考えていました」

 大学進学後に一人暮らしを始め、親に会う機会が増えると心配され、病院に連れていかれた。処方された薬を飲み始め、毎月月経が訪れるようになったが、今度は過食症に悩まされることになる。

「それまで寮生活である程度管理されていた暮らしから、大学では完全に自己管理の生活に変わり、そのギャップに戸惑いや悩みが深くなっていきました。太ることや食べることに対する罪悪感が常にあって、競技で結果が出なければ自分を責め続ける。体重に対する強迫観念からおかしくなってしまったんだと思います」

 そう当時を振り返る女性は今、年代問わず多くのランナーに向けて、体に心地よい走りを学ぶ場を提供している。自身の体を雑に扱いすぎていたことへの戒めも込めて「体の声を聞くことは大事」と伝えているという。(編集部・秦正理)

AERA 2024年5月27日号より抜粋

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