昨年11月に週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2024」のインタビューを受けたときの倉田さんと叶井さん(撮影/写真映像部・東川哲也)

彼の考え方が大好き

――二人が結婚したとき、叶井さんはバツ3で、600人斬りが話題になった。さらに叶井さんが立ち上げた会社が倒産、自己破産もし、究極の「だめんず」とも言われたが、周囲の心配をよそに、倉田さんの結婚生活は幸せだった。

 彼の物の考え方とか、感受性が大好きでした。たとえば娘が勉強せずにテストを受けてダメだったとき、私は「もうちょっと勉強した方がいいんじゃない?」と言ったんです。でも夫は「あんたは勉強が楽しかったかもしれないけど、この子は違う。娘はあんたとは違う人間だし、人間は楽しいことしかやらないんだから、怒らないでやってくれよ」と。確かに人間は好きなことしかやれない、夫の言う方が正しいと思いました。

ママ友も私より多い

 どんなときでも私より娘。迷わず娘を取る人でよかった。特に娘が小さい頃は、夫は自分の余暇は全部子どものために使っていました。関東近県の子どもの遊び場にはほぼ行ったんじゃないかな。私も一緒に行くんですが、食堂で原稿を書くことも。でも、夫は子どもについてまわって、そばを離れませんでした。保護者会にも全部出席してましたし、ママ友も私より多い。「緑のおばさん」の当番も必ず夫は参加して、道に立つんです。「子どもに挨拶するのもなかなかおもしろいよ」なんて言ってましたけど、面倒をいとわない人でしたね。叶井家にはママが二人いる、なんて言われたんですが、ママが二人いるって最高に強いですよ。こういう夫と子育てできて、すごい幸せでした。

 バカなところもたくさんありましたよ。だって、余命宣告されてから、何回も死んだふりをされましたからね。末期がん患者が死んだふりって、ちょっと洒落にならないでしょ? いつも座っている座椅子で、「うっ、苦しい……」と言って、バタッと倒れるんです。それで私がびっくりして、「父ちゃん? 父ちゃん?」って駆け寄ると、しばらくしてから「うそ~ん」って。なんて不謹慎な冗談をする人なんだろうと思いながら、毎回泣き笑いしてました。

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