日本には10種類以上のスズメバチが生息している=東京都内、米倉昭仁撮影
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 人を死に至らしめるという意味で、日本で最も凶悪な生き物といえばクマ――ではなく、実はスズメバチだ。昨年度はクマにより6人が亡くなった。スズメバチの場合、毎年15人前後が襲撃により死亡している。

【写真】スズメバチ女王バチ1匹だけ、簡単に駆除できるのはこんな巣

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 スズメバチはおそろしい。大きな羽音にオレンジ色と黒の大きなボディー。目の前に飛んでくるだけで、体がすくんでしまう。そして、このスズメバチ被害を防ぐうえで、今は非常に重要な時期だという。

 東京を中心に年間5千個もの巣を取り除いているという、スズメバチ駆除のプロフェッショナル「ヨシダ消毒」(練馬区)を訪ねた。

女王バチ1匹だけで活動

「5月のスズメバチは『トックリバチ』と呼ぶこともあるんですよ」(※トックリバチという名の別種のハチもいる)

 清水一郎代表取締役はそう言いながら、作り始めだというスズメバチの巣を見せてくれた。確かに、とっくりか一輪挿しの花瓶のように見える。

 全長10センチほどで、茶色いマーブル模様。手にのせてみると、軽い。巣の出入り口が細長いのは、外敵が侵入しづらくするためだという。

 この時期、スズメバチは女王バチだけで活動する。たった1匹で巣作りから産卵、子育てと、大忙しだ。巣の守りにまで手が回らないため、近寄っても刺されることはないという。

一瞬で駆除はおしまい

「日中はエサを取りに行っているか、巣の中で幼虫の世話をしているかで、夜は寝ています。ですから、巣にそっと忍び寄ってポリ袋をかぶせて切り離してしまえば、駆除は終わり。何も特別な道具はいりません」

 女王バチが巣の外にいた場合、同じ場所で再び巣作りをすることはめったにない。

 女王バチが巣の中にいた場合、スズメバチのあごは非常に強力なので、ポリ袋を食い破って逃げ出す可能性がある。頑丈なポリ袋を使うか、袋を二重にすることが望ましいという。密封しておけば、中のハチは水やエサ不足で死ぬ。3日ほどおいてから生ごみとして出せばいい。

5月ごろ女王バチは1匹でこのような「とっくり」型の巣を作る=東京都内、米倉昭仁撮影

自己駆除で狙うなら夜

 ただし、最初の働きバチ十数匹が羽化し、巣を守るようになると、事態は変わる。スズメバチの働きバチは、巣に近づく人間を攻撃するのだ。

巣の形がとっくり形からラグビーボール形に変化するので、働きバチがいる巣かどうかは容易に判別できる。

 もし、自分で巣を除去したいのなら、狙うべきはハチたちが寝静まった夜だという。

袋をかぶせてスズメバチの巣を撤去する=ヨシダ消毒提供
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