松下さん自身はアドリブを入れるほう?

「ないですないです(笑)。台本通りにやります。何かしてやろうとか笑わせようっていうことは、技術的にも私にはまだまだだと思うので。台本に沿って演じれば演じるほど面白くなっていくっていうのは、やはり台本の上手さと、三宅さんの演出のセンスですね。 

三宅さんは、すごく細かいさじ加減で演出つけてくださるんです。セリフの間合いとかテンポとか、その一つ一つも全部、毎回。毎日同じ箇所でダメ出しが入って、今回こうしてみよう、って。やっぱり、腕というか、技術がないと、笑いの間合いやテンポって生まれないんだなっていうのは、すごく感じました」

だが、91年に出演し、日本アカデミー賞助演女優賞を受賞した映画「波の数だけ抱きしめて」の馬場康夫監督は、自身のYouTubeチャンネルで、いくつかの演技やセリフが、松下さんのアドリブだったと明かしている。そう告げると、「何かやってたかもしれないです。カットがかからないと、自分で演技を終われなくて」と笑った。

「馬場監督は、演出っていうよりは、ファッションから何から、80年代の細部にこだわって映画を作ろうとされていた記憶があって。動きは役者が自分たちで作る感じだったんです。ロケは海で、解放的だし、楽しいし、アドリブを狙って、っていうよりは、仲間うちのやりとりみたいな感じで、自然に出てきたんだと思います」

 ちなみに、松下さん演じる裕子を印象付ける場面のひとつが、“運転が下手”というキャラクターだが、「あれたぶん、リアルに転んでると思う。当時はバイクも乗ったことなかったので、怖かったのを覚えています(笑)」

(編集部・伏見美雪)

AERA 2024年5月20日号に加筆

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