――85歳の今も、バリバリの現役ですよね?

 月に一度、深夜帯のシフトに入っています。夜のほうが、帰る時間を気にせずじっくり聞けるから好きなんです。「眠れない」とか「色々考えて不安」とか。長くなる電話も多いですが、真夜中に話し相手がいない人たちと話すっていうのは、かえって意味があるような気もして。

 安心してなんでも話せる場所であるために、相談員をしていることは家族やごく親しい人以外には明かしません。相談者から「お会いしたい」と個人的な関係を求められる場合もあるけれど、トラブルを防ぐ上でも絶対禁止。違反したら、相談員をやめてもらうことになります。

――どんな人が相談員をしているのですか?

 埼玉は登録人数が約400人、実働人数が約300人いるのですが、東京とちがって定年を設けていないこともあり、高齢化が進んでいます。60代、70代の方がメインで、80代の方が7、8人。最高齢は90代です。

 最近は男性の相談員も増えてきました。当初は子育てを終えた主婦の方がほとんどで、男性は1割にも満たなかったけれど、応募年齢の上限を取っ払ったことで仕事をリタイアしてから始める男性が増えて、今は2割程度になりました。

埼玉いのちの電話では、インターネットでの相談も受け付けている

100件のうち3件しか出られていなかった

 でも相談員不足は深刻ですね。中高年の主婦の方々はパートなどで働くようになったし、同じ傾聴ボランティアでも手当てが出る活動が広がってきたことも背景にあると思います。

――現場はひっ迫しているのでしょうか?

 埼玉は募集活動や相談員のサポート体制を強化してきて、年間2万件以上という全国最多の相談を受けているけれど、電話が鳴りっぱなしでとても受けきれない。数年前にNTTに調査してもらったら、100件のうち3件ほどしか出られていませんでした。「3日かけつづけてやっとつながりました」とおっしゃる相談者もいます。

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