元日の能登半島地震で、火災で焼けた輪島の市街地。今も避難生活を余儀なくされている人たちがいる。1月2日午後2時15分
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 今年に入り、各地で震度5弱以上の揺れが相次ぐ中、注目されるのが「スロースリップ」だ。「次の大地震」と懸念される南海トラフ巨大地震との関係は。都市部への津波の危険性も浮き彫りに。備えは大丈夫か。AERA 2024年5月20日号より。

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 各地で大きな揺れが次々と起こる中、いま注目されているのが「スロースリップ」と呼ばれる現象だ。

 2月下旬から3月中旬にかけ、千葉県東方沖を震源とする地震が相次いだ。3月1日にはM5.2の地震が発生し、千葉県と埼玉県で震度4の揺れを観測。国土地理院は「スロースリップが相次ぐ地震を誘発しているとみられる」との見解を示した。

 スロースリップとは何か。

 スロースリップに詳しい、京都大学防災研究所の伊藤喜宏(よしひろ)准教授(地震学)によれば、スロー地震に伴って起きるもので、プレート境界がゆっくりとすべる現象だという。

「通常の地震は、断層の上盤側と下盤側が1秒間に約1メートルの速度でずれて動きます。それに対し、スロースリップは1秒間に10のマイナス6乗メートル、つまり通常の地震の100万分の1という極めて遅い速度でゆっくり動きます」

 スロースリップが地震を誘発するのは、(1)スロースリップによってプレート境界の「アスペリティ(固着域)」に力が加わる、(2)プレート境界の上盤側もしくは下盤側の力のバランスが変わる──この二つが大きい。2月下旬から3月中旬にかけて千葉県東方沖で相次いだ地震は、主に(2)によるものだという。

 スロー地震の発生メカニズムやその発生条件は、はっきりとは分からない。ただ、スロースリップは昔から世界各地で発生していて珍しい現象ではなく、地震の観測機器や観測網が充実した2000年代初頭から検出されるようになった。それがいま注目されているのは、大地震との関係性が指摘されるからだ。伊藤准教授は言う。

「スロースリップによって、プレート境界の断層がずれ動く速度は通常の状態と比べ10倍から100倍速くなることが分かっています。その結果、プレート境界の固着域にひずみがたまる速度が速くなり、大地震などのトリガー(引き金)になる可能性があります」

 実際、11年の東日本大震災をもたらしたM9の東北地方太平洋沖地震が発生する約1カ月前や、17年から19年にかけてメキシコで発生したM8.2などの巨大地震の前にはスロースリップが観測された。さらに今年4月の豊後水道を震源に起きた地震では、震源域の周辺でスロースリップが少し活性化している可能性があるという。このスロースリップが、南海トラフ巨大地震を誘発することはあるのか。

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