梨泰院で輸入雑貨店を開くオーナー(48)は、「お客さんの数は最盛期の半分にも満たない」と天を仰ぐ。実際、撤退した店も多く、「賃貸」と書かれた店舗があちこちに目立つ。一方で、梨泰院に代わる街ができたのかというと、それも見当たらない。最近、ホットプレースとして騒がれている聖水(ソンス)や弘大(ホンデ)などは、若者が楽しめるというだけで異国情緒はない。外国のレストランが多いわけでもない。

 そうした状況のなかで、平沢の話が出てきたのだ。

飲食店で英語は必須

 のどかな4月の最後の週、筆者は「平沢のアメリカンストリート」と呼ばれる「安亭里ロデオ通り」を訪れた。「安亭里」は地下鉄1号線「平沢」駅からバスで20分ほど。平沢駅の周りは典型的な田舎の景色だが、米軍基地である「キャンプ・ハンフリーズ」付近まで行くと、安亭里ロデオ通りが出現し、空気がまったく変わる。

平沢「安亭里ロデオ通り」。 昼間は静かだが、夜になると外国人と韓国人が集まる繁華街になる

 韓国語よりも英語の看板のほうが多い。駐車場の案内文も英語だ。アメリカ風のハンバーガーやピザ、ステーキ専門店があちこちにあり、アメリカ人に合わせた生活用品店もあった。街には韓国人より外国人のほうが多く、「米軍人専用」と書かれたパブもある。

 筆者はハンバーガー店に入り、ランチ用のセットメニューを注文した。ハンバーガーは当然アメリカ風で、メニューも英語のみ。別のテーブルでは、西洋人の女性が娘らしき女の子と一緒にメニューを見ていた。韓国人の店員は彼女に呼ばれると、流暢(りゅうちょう)な英語で注文をとる。客のほとんどが外国人なので、ここで英語は必須だ。

 こんな動きに敏感な韓国人もいて、彼らは盛んに写真を撮っていた。街を歩く外国人も、誰もが明るい顔をしていたし、街全体がきれいだった。平沢市でもこの街を観光地にしていく一環で「芸術家広場」をつくった。アメリカと韓国両方の情緒を同時に満喫できることを狙っているのだろうか。

 しかしこの安亭里ロデオ通りは、それほど華やかでも広くもない。あまり期待しすぎると「しょぼい」と感じてしまうかもしれない。それなら「平沢第3の梨泰院通り」へ行くといい。ここは、地下鉄1号線平沢駅からソウル方向に少し進んだ松炭(ソンタン)駅が最寄り駅となる。近くに「平沢国際市場」がある。

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