男子フリーの演技を終えた宇野昌磨。笑顔を浮かべて声援に応えた(3月23日撮影)(写真:Raniero Corbelletti/アフロ)

 14日、フィギュアスケート男子で22、23年世界選手権2連覇の宇野昌磨(26=トヨタ自動車)が現役引退の記者会見を行う。9日に自身のSNSで現役を引退することを電撃発表していたが、改めて思いや今後の活動に関して自ら語ることになる。そんな宇野昌磨の過去の記事を振り返ると、大きな大会を終えるごとに様々な葛藤や覚悟がにじみ出ている。(「AERA dot.」2024年4月9日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)

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 カナダ・モントリオールで開催されたフィギュアスケート世界選手権。3連覇をかけて挑んだ宇野昌磨は、ショート首位から総合4位という結果に。演技後、いつになくすがすがしい表情を見せた。AERA 2024年4月15日号より。

 北京五輪以降、男子スケート界を牽引してきた宇野昌磨。今大会は、急成長を見せる若手との接戦が予想されていた。

 ショートは、王者たる演技だった。冒頭の4回転フリップは無駄な力のない完璧な飛翔。すべてのジャンプが美しく、107.72点での首位発進を決めた。

「自分にとって、今までで一番良いフリップでした」

 実際には、公式練習では4回転フリップは不調だったが、見事に本番に合わせた。

「練習でいろいろな部分を変えました。助走の速さやコース、色々な跳び方を試行錯誤した結果、みえてきた部分を最終的に試合で出せました」

 もう一つ、王者らしい落ち着いた思考を見せた。

「氷に乗ったときに、右足の靴紐を固く締めすぎてしまったなと思いました。でも、固いときにどういうジャンプになるかを見極めた練習もしてきていたので、想定とは違う状況でも良いパフォーマンスが出せました」

マリニンは「別の次元」

 しかし2日後のフリーは様子が違った。4回転ループで転倒すると、4回転フリップはステップアウト。美しいコレオシークエンスは健在だったが、胸元に手を当てるフィニッシュポーズをとると、哀しさをのみ込むように、小さく笑った。

「本当に自分らしいなと思いましたね。ショートで良い演技ができたことも、最大の大事な場面で挑戦しきれなかったことも。思い出に残る大会になりました。最善を尽くしたと言い切れるので、すがすがしい気持ちです」

 4回転アクセルを含め、6本の4回転を成功させたイリア・マリニンが優勝した。

「彼は、僕とは別の次元にいる。必死に食らいつきましたが、彼の当たり前に、僕の絞り出したスケートが敵わなかった。彼は優しくて素晴らしい才能を持ち、次の時代を築いていく選手。彼の存在を皆が乗り越えようとして、フィギュアスケートが向上していくと思います」

 そして、自分が戦ってきた時代を振り返った。

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