全日本選手権(2023年12月、長野)で見事2連覇を果たした宇野。そのまなざしは3月に行われる世界選手権へ向けられている(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 14日、フィギュアスケート男子で22、23年世界選手権2連覇の宇野昌磨(26=トヨタ自動車)が現役引退の記者会見を行う。9日に自身のSNSで現役を引退することを電撃発表していたが、改めて思いや今後の活動に関して自ら語ることになる。そんな宇野昌磨の過去の記事を振り返ると、大きな大会を終えるごとに様々な葛藤や覚悟がにじみ出ている。(「AERA dot.」2024年1月21日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)

【写真】中国・北京で行われたGPファイナルで初優勝したイリア・マリニン

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 昨年12月に行われた全日本選手権で圧巻の滑りを披露し、2年連続6度目の優勝を果たした宇野昌磨(26)。世界選手権3連覇に向けての思いを語る。AERA 2024年1月22日号より。

 全日本選手権の2連覇を決めた昨年12月23日の夜、宇野昌磨は心を整理しながら、今年3月に行われる世界選手権に向けたモチベーションを語った。

「僕はこの競技人生に悔いを残したくないというのが一番、先決にあります。表現をおろそかにしてまでジャンプをやってしまうと昨季と同じになってしまう。表現として自分が悔いのない演技をした上で、4回転を増やせるなら増やしたいです」

 でも、と言って続ける。

「(イリア・)マリニン君は、僕よりも高いジャンプ構成で安定感がとてつもなく高い。正直なところ、僕は表現を頑張りたいのですが、競技をやる以上ジャンプを頑張らないといけない。自分の最高のものを出せるような調整をしたうえで、ジャンプを限界の本数まで入れることも視野に入れていこうと思います」

 ジャンプか、表現力か──。宇野は、揺れる心を隠すことなく口にする。むしろ迷いをすべて吐露することで、答えを探しているようにも見えた。

ライバルの刺激で変化

 もともと、今季を前に定めた目標は「表現力」だった。世界選手権の連覇を達成し、勝利へのこだわりは消えていた。

「この2年、自分が思っていた以上の結果を出すことができました。でもジャンプ中心のプログラムになっている。自分が何に満足できるのかを考えた先に、これからは表現力を頑張りたいと思いました」

 昨季は、勝つためにフリーで「4回転5本」に挑んでいたが、今季は4回転サルコウを封印して4本に。表現力に注力すると、中国杯2位、NHK杯2位、そしてグランプリ(GP)ファイナルはマリニンに世界一のタイトルを渡し、2位となった。

 すると、心に変化が起きた。

「マリニン君の影響は大きいですね。今季も“競技者”としてやると決めました。表現を頑張りたいけれど(高い)点数にならないなら、ジャンプをやらなければならない。ジャンプにもうちょっと比重を置いて練習しようと思いました」

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