つまり会計上は、200万円すべてを購入した年の経費にするのではなく、10年間にわたって「売上獲得に貢献する」から、その期間にわたって経費として処理するのです。

 ただし、同じ営業車でも、4年でダメになることもあれば10年もつことだってあります。国税庁からすれば、それぞれが勝手に処理してもらっては困るのです。コンセプトは「公平性」なので、一律にその計算方法を決めたのです。

 耐用年数についても国が「法定耐用年数」というものを定めて、同じ条件で減価償却費の計算をすることを義務付けたのです。つまり、新車の営業車は6年と決められており、6年間にわたって売上獲得に貢献すると想定してその期間にわたって「減価償却費」として経費にしてよいと規定しているわけです。

 「この 領収書が経費になるか?」の判断基準

 確定申告の書類作成時期になると毎年こんなことをよく聞かれます。

「いくらまで経費を使っていいですか?」

「この領収書、経費として認められますか?」

 税理士は税務の専門家だから聞けば即座に答えてくれると思っているのかもしれません。でも、何が経費になるかというのは、税理士にしても簡単に答えることはできないのです。その内容と目的によって決まるのです。

 私はクライアントから確定申告の相談を受ける時に、「経費とは何だと思いますか?」と必ず尋ねることにしています。ほとんどの人はこの質問に正確に答えることができません。でも、これからフリーランスになったり、起業して事業を営んでいこうという人にとって、この定義を知っておくことは大切かつ必要不可欠なことです。

 経費とは「売上を獲得するための支出」を指します。

 大事なのはこの支出は、単なる「消費」ではなく、「売上を獲得するために貢献する」ものでないといけないのです。逆にいえば、「売上獲得に貢献しない支出(など)は経費ではない」ということになるのです。

 つまり、何が経費になるのかは税理士でなく、基本的にはこの判断基準であなた自身が決めることです。あなたがその支出が売上に貢献すると判断できれば経費にすればいいのです。

 そしてその領収書が経費になるかどうかも、「それがあなたの事業の売上に貢献しているなら経費」ということになり、これもあなた自身しかわからないことです。

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廣岡実

廣岡実

廣岡実(ひろおか・みのる)/税理士法人TOTAL神田事務所所長・税理士。1959年生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部を卒業後、大手商社に就職。経理・総務部門の実績を積む。税理士だった父親の病気をきっかけに退職し、父の事務所で修行。95年に税理士資格取得と同時に独立。2024年1月より税理士法人TOTALのパートナとして合流し、神田事務所所長となる。「みんなが儲けてほしい」をモットーに、顧客に寄り添ったきめ細かいアドバイスが人気を集めている。

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