AERAの連載「2024パリへの道」では、今夏開催されるパリ五輪・パラリンピックでの活躍が期待される各競技のアスリートが登場。これまでの競技人生や、パリ大会へ向けた思いを語ります。今回は日本競泳史上最年長の33歳で五輪代表に内定した鈴木聡美選手のインタビュー後編をお届けします。
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2大会ぶりに五輪切符を手にした勝因は、プールの外での“変化”にもあった。
「食べ過ぎちゃったり、考えていても食事のバランスが偏ったりだとか、気の緩みによる体重の増減から抜けられなくて大変でした」
ロンドン五輪の時に62~63キロだった体重を61キロ、あわよくば60キロに減量できないか、トレーナーから提案された。
「年齢を重ねるにつれ、体が重いとその分、動かすために必要なエネルギーが増えます。ただ、61キロは軽すぎて動かないんじゃないかと思ったんですけど、減量したら明らかに水泳のパフォーマンスが上がったんです。キレも出て、いい方向に進むようになって」
競技のための減量のはずだったが、トレーナーからは意外なことを言われた。
「やせたら、洋服だっておしゃれもしやすくなるし、いいことずくめじゃない?」
競泳漬けの生活を送る鈴木には意外な提案だった。
「メイクはこんな感じがいいんじゃない?」「髪の毛もショートすぎないボブはどう?」
鈴木は初めて聞いたとき、ちょっと疑問に思ったという。
「トレーニングも教わるんですけど、それよりも、おしゃれの話をよくされたんですよ。一人の大人の女性としての磨きもかけていこうよ、と」
だが、徐々に実感が湧いてきた。
「『こういう服装をやってみよう』と言われて、洋服を買って、着ていくと『いいね!』とか言われたりして。やっぱり褒められるとモチベーションが上がるじゃないですか」