諸沢莉乃(もろさわ・りの)/2001年、秋田県生まれ。自宅ポストに入ったチラシがきっかけで16年、「CoCo壱番屋緑区中山店」にアルバイト入社。好きなメニューは「豚しゃぶカレー」の旨辛にんにくとマヨネーズトッピング(撮影/編集部・福井しほ)

 だが、屈託のない笑顔でこう話す。

「これからそう感じる日がくるのかもしれませんが、今はないですね。以前メディアに取り上げていただいたときには、SNSで『お飾りだろう』と書かれたこともあります。でも、私が注目されることで会社のみんながよろこんでくれるなら、飾りでもいいかなって思っています」

 言葉の端々から、地に足をつけ、一歩ずつ着実に進もうという意思が伝わってくる。社長の打診があったときも、楽しみに感じたことは覚えているが、誰かに話した記憶はあまりないという。

「実家に暮らしていますが、親にもすぐには言いませんでした。友達にも最近やっと言ったぐらいなんです」

 巷のインフルエンサー社長のようにSNSを活用するわけでもない。社長として発信したほうがいいと思いつつ、なかなかできないでいる。

 そんな等身大さがある一方で、日々のルーティンはがらりと変わった。朝は各店舗から上がる日報に目を通すことから始まり、ミーティングにも顔を出したり、店舗を巡回したり。諸沢さんを“後継者指名”した西牧さんに同行し、その振る舞いを学ぶこともある。「寝たらすぐに忘れるタイプ」だから、教わったことを覚えるために会話を録音して、何度も聞き返す。

 当面の目標は「西牧さんを完コピすること」だ。

「就任後3年は西牧が並走してくれるので、今年は50%、次の年は75%って近づきたい。今すぐに新しい風を吹かせたいという思いはないんです」

 4月中旬、諸沢さんに会いにココイチの店舗を訪れた。社長就任を2週間後に控えても、プレッシャーよりワクワクが大きいという。

「知らないことが多すぎるので、大丈夫かなと思うことはあります。でも、私の苦手なことは、それが得意な人がフォローしてくれる。最初は『一人でやらなきゃ』ってプレッシャーを感じていたけれど、今はみんなで作りあえたらいいなって考えに切り替わっています」

(編集部・福井しほ)

AERA 2024年5月13日号

著者プロフィールを見る
福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

福井しほの記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
明菜・聖子・ジュリー…スター・アイドル作品はフィジカル盤(CD/LP/カセット/DVD/Blue-ray)で!