岐阜県御嵩町の、リニアトンネル工事の残土処分予定地周辺で確認されたミゾゴイ。日本野鳥の会は昨年8月、御嵩町やJR東海などに処分予定地の変更を求める要望書を提出した(写真:日本野鳥の会岐阜提供)

「リニアは公共の利益ではなく、そこに暮らす人たちの大切な終のすみかと生活基盤を奪うもの。人権侵害を受忍する理由はありません」

 地震学者で神戸大学の石橋克彦名誉教授は、11年の東日本大震災で東京電力福島第一原発事故が起こる前から、原発が地震に弱いことを警告し「原発震災」の可能性を指摘していた。今「原発とリニアは事業の性格が似ている」と指摘する。

「まず、両者とも国策民営です。そして、御用学者たちのずさんな審議でゴーサインが出された。また、マスメディアはリニアの『負』の側面を伝えず、専門家の批判も弱く、国民は『夢』のイメージしか与えられませんが、これも原発開発の初期と同じです。沿線住民が大きな犠牲を強いられ、JR東海が住民軽視で強引に事業を進めているのも同様です」

 そして、コロナ禍を経て社会の価値観も変わる中、「リニアは時代錯誤」だと語る。テレワークが普及したコロナ後の世界で三大都市圏を高速で結ぶ必要があるのか、と。しかも、大阪まで延伸した際のリニアのピーク時の消費電力は国土交通省の試算で約74万キロワットと、原発1基分の出力に相当する。脱炭素社会において、電力多消費型のリニアは時代に即した乗り物なのか、と。そしてこう提言する。

「様々な問題が噴出してきた今、いったん工事を中止し、今まであまりにも不足していたリニアの必要性と安全性、環境への影響などの議論を、徹底的に行うべきです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年5月13日号より抜粋

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