三木さんは18年、近所の幼なじみから、自宅のほぼ真下をリニアのトンネルが通る計画があると知らされた。まさに「青天の霹靂」だった。
不安がより現実味を帯びたのは20年10月、東京外郭環状道路(外環道)の地下トンネル工事中に起きた陥没事故だ。巨大なシールドマシン(掘削機)で深さ約50メートルの地下でトンネルを掘っていたところ、道路が陥没した。使っていたシールドマシンは直径16メートル。リニアの工事で使うのは直径14メートル。リニアでも、同じ事故が起きても不思議ではない。しかも事故が起きる前から、周辺住民は騒音や振動、低周波音に苦しめられていたと知った。陥没した穴は閉じられたが、多くの住民が引っ越しを余儀なくされ、財産権を侵害され平穏生活権を奪われ、苦しみは続いている。
「法律をつくれば何をやっても構わないというものではありません。事実上、告知も同意も補償もなくトンネルを掘ることができるとする大深度法は、違憲な法律です」
コロナ禍での価値観変容、工事中止し議論すべき
そして、「JR東海は傲慢で住民軽視」だと批判する。説明会は行っても形だけで、工事の進捗状況すら聞いても教えてくれない、と。祖父の代から田園調布で暮らす三木さんは言う。
「ここは私にとって『故郷』。故郷を壊されたくありません。この裁判は、お金ではあがなえない価値を守る闘いでもあります」
原告の一人、世田谷区在住の池田あすえさんは言う。