東京-名古屋間を40分、将来は東京-大阪間を67分で結び、時速500キロで走り、「空飛ぶ地下鉄」とも呼ばれるJR東海のリニア中央新幹線。静岡県の川勝平太知事の辞職表明で、前進に期待の声が上がる中、住民の生活破壊の問題も横たわる。コロナ禍を経て、脱炭素社会における中、リニアは本当に必要なのか。AERA 2024年5月13日号より。
【図】リニアは安全? 南海トラフ巨大地震の想定震度の分布図はこちら
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そもそもなぜ、JR東海はリニアを建設するのか。
「大規模災害への抜本的な備えとして、日本の大動脈輸送を東海道新幹線とリニアで二重系化するため。さらには首都圏、中京圏、近畿圏の三大都市圏が一つの巨大都市圏となり、人と人が会うことで新たなイノベーションが生み出され、余暇の過ごし方などライフスタイルの変化を通じて豊かで多様な暮らしを実現するなど、新たな可能性が生まれると考えています」(同社)
だが、その発想の下でそこに暮らす人たちの生活がないがしろにされていないか。今年3月、都内に住む45人が、国にJR東海が申請した大深度地下使用の認可取り消しを求める行政訴訟を東京地裁に起こした。
「憲法が保障する財産権だけでなく、平穏生活権までも侵害されます」
この「NO!大深度リニア訴訟」の原告団の団長で、大田区田園調布に暮らす三木一彦さん(66)は訴える。
財産権は憲法29条が保障する権利。平穏生活権は憲法13条(幸福追求権)と憲法25条(生存権)の法意に照らし、人格権に基づく平穏な生活を送る権利として保障されている。
リニアは、開発が進んだ都市部では、地表に影響が出ないとされる地下40メートル以深の「大深度地下」を通る。大深度地下は、道路や鉄道など公益の事業は地権者の同意や用地交渉、補償なしでも、国や都道府県の認可を受けて使用できる。それを可能にしたのが、01年に施行された「大深度地下使用法」だ。リニアの場合、首都圏では品川(東京都)から町田(同)までの33キロにわたる。