放課後の中学校の教室
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「学校の先生は忙しい」。そう指摘されて久しい。だが、今に至るまで問題は解決せず、長時間労働に苦しむ教員が後を絶たない。影響は、子どもの学びにまで及んでいる。『何が教師を壊すのか』(朝日新書)の著者が、現状を報告する。AERA 2024年4月29日-5月6日合併号より。

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 2014年に発表された経済協力開発機構(OECD)の国際教員指導環境調査の結果によると、日本の中学校教員が仕事をしている時間は週に53.9時間で、参加した34カ国・地域で最長だった。その後、社会の働き方改革の機運の高まりもあり、教員の長時間労働に注目が集まる。文部科学省は月の残業時間を計45時間までとする上限基準を設けるなど、改革を進めた。

 ただ、文科省が23年4月に公表した、22年度の公立学校教員の勤務実態調査の結果(速報値)では、教諭の平日1日あたりの勤務時間(在校時間)は、小学校教諭は10時間45分、中学校教諭は11時間1分。前回の16年度調査と比べれば約30分減っていたが、1カ月あたりの残業時間は、中学校で8割弱、小学校で6割強の教員が45時間に達しており、文科省も「長時間労働が依然として多い」と認めている。

 教員の多忙さが解消しない要因は様々だ。

 まず、時間や人手をかけて対応すべき課題が増加傾向にある。なかでも、不登校の小中学生は近年急増している。文科省の22年度の「問題行動・不登校調査」によると、不登校の小中学生は29万9048人と過去最多を更新し、前年度比22.1%の大幅増だった。不登校生に丁寧に対応しようと思えば、保護者に電話したり、時に家庭に様子を見に行ったりする必要がある。いじめは小中高などで約68万2千件が認知され、被害が深刻な「重大事態」は923件。いずれも過去最多だった。

 さらに、発達上の課題を抱える子や日本語のできない子など、個別対応が必要な子も増加傾向にある。保護者から向けられる目も年々厳しくなっているというのが多くの学校の見方だ。

「脱ゆとり」を掲げる08年の学習指導要領の改訂で教える量が大幅に増え、17年の改訂ではプログラミングなども追加された。新型コロナ禍で小中学生に1人1台の情報端末が配られ、端末のパスワード設定や保管、故障への対応なども新たに必要になった。仕事が増え続ける一方で、もともとの仕事がなくなることはほぼない。

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