心房細動の発作自体は心室細動などに比べてそれほど強烈ではありません。自覚症状として、動悸や息苦しさ、めまいなどを覚えることもありますが、無症状の人も40~50%いるとされています。発作が起こると、左心房内の血液がスムーズに流れなくなり、よどんだ部分に血栓ができやすくなります。この血栓が何かの拍子に血流に乗って脳に到達し、脳の血管を詰まらせて脳梗塞を発症させてしまうのです。

 心房細動の発症の大きな誘因は加齢ですが、そのほかに高血圧や心血管障害(心筋梗塞や狭心症)、心臓弁膜症などの循環器系の持病や病歴があること、糖尿病、過度な飲酒、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能亢進(こうしん)症、肥満などが挙げられています。こうしてみると、生活習慣病と関係していることがわかります。

 なお、心房細動のある人の脳梗塞リスクを知る方法として、「CHADS2(チャズツー)スコア」があります。5つの項目(①心不全がある、②高血圧がある/治療中である、③75歳以上、④糖尿病がある/治療中である、⑤これまでに脳梗塞あるいは一過性脳虚血発作を起こしたことがある)のうち1つでも当てはまれば、脳梗塞を防ぐ治療(抗凝固薬の服用)が推奨されます。

心房細動は、発作が2回起きたら治療の検討を

 心房細動は発作が続いている期間によって、「発作性」「持続性」「長期持続性」に分けられます。発作性は発作が7日以内におさまるもの、持続性は7日を超えて持続するもの、長期持続性は1年以上続くものを指します。

 治療は、①血栓をつくらせない(=脳梗塞の予防)、②脈のリズムを改善する、③高血圧や糖尿病、肥満などの持病の改善、の3つを柱にして進められます。

 現在治療の中心になっているのが「心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)」です。心房細動発作の原因となる箇所(左心房にある肺静脈との接合部など)を焼く(焼灼する)ことで発作を防ぎます。「発作性」の場合にはこの治療で根治することもまれではありません。

 このほか、血栓ができるのを予防する抗凝固薬や、脈のリズムを整える抗不整脈薬などを併用します。

「心房細動は自覚症状があらわれにくいので、『心筋を焼灼しましょう』と言われても、納得できないかもしれません。心房細動は脳梗塞だけでなく、心不全を合併しやすく、認知症の発症リスクも約1.5倍高くなるといわれています。発作が2回起きたら、放置するリスクを重く受け止めて、治療を開始してほしいと思います」(夛田医師)

(取材・文/別所 文)

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