「致死性不整脈」とも呼ばれる心室細動・心室頻拍
冒頭で、不整脈のなかには突然死につながるものがあると記しました。その危険性が高い頻脈が心室細動と一部の心室頻拍で、「致死性不整脈」と呼ばれることもあります。年間の患者数は心室細動約5000人、心室頻拍約1万2000人(厚生労働省令和2年度患者調査)。数はそれほど多くありませんが、とくに心室細動は、突然死のリスクが高いとされています。
致死性不整脈が起こると、血液が送られなくなって血圧が低下し、多くは失神して倒れてしまいます。患者は「助けを呼ぶひまもない」といわれるほど、失神は急に起こります。周囲の人はすぐに救急車を呼び、救急車を待つ間に「AED(自動体外式除細動器)」で心臓に電気ショックを与える緊急処置をおこなう必要があります。
この発作はどんな人に起こるのでしょうか。最も多いのが心筋梗塞や重症心不全などの心臓の病気が原因のもので、70~80%を占めるとされています。また、30~50代の比較的若い世代の男性に多い遺伝性不整脈の「ブルガダ症候群」が心室細動の原因となることもまれにあります。
致死性不整脈の治療は、①発作が起こらないようにする、②発作が起きても心停止に至らないようにする、の2つが目標になります。原因になっている疾患の治療・改善と抗不整脈薬などの薬物療法のほかに、②を目的に植込み型除細動器(ICD)という医療機器を植え込む治療をおこないます。
脳梗塞のリスクが5倍になる「心房細動」
頻脈のなかで最も患者数が多いのが心房細動で、推定患者数は100万人以上といわれています。心房細動は突然死のリスクはそれほど高くありませんが、別な恐ろしさをもつ不整脈として知られています。福井大学病院循環器内科学教授の夛田浩医師は次のように話します。
「心房細動が怖いのは、放置すると、脳梗塞(脳塞栓症)のリスクが健康な人の約5倍高くなるということです。さらに、心房細動が原因の脳梗塞(心原性脳塞栓症)は脳のダメージを受ける範囲が広いために、ほかの脳梗塞に比べて死亡率が1.2倍になり、重い後遺症になるリスクが1.4倍になるとされています」
頻脈と脳梗塞は、どのように関係しているのでしょうか。