なので、私は岸田さんのセンスをどうこういえない。というか、その部分は似た者同士であるとわかった。
いいたいのは、そこじゃない。私はしゃもじのお土産で爆笑し、そのあと、ふとこう感じたのだ。
(岸田さんがウケを狙ったのは、我々に向けてだろう。日本は本当に内向きな国になってしまったな)と。
切ない話であるが、海外を訪問する日本の総理は、日本のため、私たちのために、いっているとは思えない。私たちの税金をかなり使うこととセットで(という取引によって)、世界の要人とファーストネームで呼び合い、肩を組んだりして、私たちに見せつける映像を作るために海外へいくのだ。それは、自分の権威作りや、選挙を有利にするためである。
それが証拠に、海外の要人と会っても国のため特別に話が進展したなんてことはほぼない。日本が金を出すことになったという話ばかり。
だけどまあ、今回のことで必勝しゃもじは売れるでしょうね。大金使ってウクライナまでいった最大の効果は、それかもしれない。国内にいる少数派の土産品収集家の心に、あのしゃもじは突き刺さったはずだ。私は思ったもん。まだ、あれ持ってないって。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2023年4月14日号