好きだった食べ物だけでなく趣味などに興味を示さない場合や、加齢で活動量が落ちるとはいえ、あまりにじっとしていたり、外へ出るのを嫌がったり、外出している様子がなかったりする場合も疑わしい。会話では、話しかけないと黙ったままだったり、何度も同じ話をしたり。
「時間の概念がなくなって、年代がずれる、亡くなった人が生きているようなことを言ったり、とうに成人している子どもに学校のことを聞いたり、といったことはよくあります。また、昔のことはよく覚えていると言いますが、実は自分に都合よく思い込んでいることが多く、小さな出来事をくり返し話していたら要注意です」
わからないのをごまかすのも傾向の一つだが、すぐ機嫌が悪くなり怒り出す、と思うと弱気になるなど、感情の起伏が激しくなったり、表情が険しくなったりおどおどしていたりするのもよくある兆候だという。
ポイントは、前はできていたことができていない、性格が変わった、苦手だったことなら程度がひどくなったといった、「変化」を察知することだ。
兆候があればすぐ受診を、できれば専門医へ
接し方について熊谷医師は「大切なのは尊厳を守ること。まずは本人の言い分を受け入れて」とアドバイスする。例えば、「東京オリンピックはいつだった?」「今の総理大臣は誰?」「私の誕生日、覚えてる?」といった質問を投げかけ、答えが間違っていても「そうだね」と肯定し、穏やかに訂正しながら兆候を探る、というように。やってはいけないのはきつい口調で攻めるようなこと。親に元気なままでいてほしい思いからついそうなりがちだが、できない親はそれがつらく、傷ついてしまう。
では、認知症の兆候が疑われた場合にすべきことは何だろう。
「診断を受けることです。理想は専門医の受診ですが、近くにないなど難しい場合はまずかかりつけ医に相談するとよいでしょう」
その際も目の前で「ボケたかも」などと言うのはタブー。最初は本人抜きでかかりつけ医に情報を伝え、うまくテストや診察につなげるようにしたい。