痛々しさのない自虐ネタでブレーク
さらに、仕事に対する姿勢を見てもいとうは視聴者から共感を得ているようだ。
「『働くうえで心がけていること』について、『嘘をつかない』ということは守っているかもしれないとインタビューで答えてました。一時期、バラエティ番組に出演するにあたってスタッフから『結婚したい! と言ってください』と頼まれることがあったそうなのですが、結婚に興味がない時は言わなかったそうです。理由は自分が思ってないことをその場しのぎで言っても、別の現場で発言が一致しなかったら疑問に思われるし、そもそも嘘をつくと自分自身が落ち着かないそうです。そんな誠実さがあるからこそ、多少の毒舌や自虐をネタにしても視聴者は不快に思わないのでしょう」
お笑い評論家のラリー遠田氏は、芸人としてのいとうについてこう見ている。
「いとうあさこさんがブレークしたきっかけは1本のネタでした。レオタード姿で『浅倉南、38歳!』と実年齢を堂々と名乗り、新体操の演技に乗せて自虐ネタを披露したのです。これが評価されてネタ番組に引っ張りだこになり、2010年に『R-1ぐらんぷり』で決勝に進みました。いとうさんの芸人としての魅力は、言動のひとつひとつに品の良さが感じられるところ。裕福な家庭に育ち、お嬢様学校の出身である彼女は若いころに女優を目指して家を飛び出し、紆余曲折を経てお笑いの道へと進みました。体力の衰えや将来への不安を語る自虐ネタを披露しても、持ち前の明るさと品の良さのせいでそれほど痛々しさが感じられない。一方で、彼女は過去に付き合った男たちに計1200万円貢いできたというエピソードを披露したことがあるんですが、後悔するそぶりはなく、いい経験になったと前向きに捉えていました。こうしたところも、嫌みがなく器の大きい彼女の品の良さを示すものでしょう」
50歳になっても元気ないとうあさこ。意外と歌やダンスも器用にこなし、気取らない人柄は女性ファンも多いだろう。浮き沈みが激しいお笑い界だが、息の長い活躍が期待できそうだ。(丸山ひろし)