競輪の八日市屋浩之選手が娘のために買い求めたダッフィーシリーズのグッズ。シーズンごとに発売されるため年々増え続けている(写真:八日市屋さん提供)

 遊園地はカップルやグループ、家族で行くところ、という常識を打ち破る動きが起きている。東京ディズニーリゾートでは、おじさんの「お1人様」も珍しくはないのだ。AERA2024年4月22日号より。

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 競輪の八日市屋浩之選手(48)=石川県=に取材中、思わず息をのんだ。

「趣味は」との質問に、麻雀やクレー射撃を挙げた八日市屋さんが、少し間をおいて「そういえば」と口にしたのが、「1人ディズニー」だったのだ。麻雀は好きだけど、人づきあいの面もある。クレー射撃も好きだけど、動体視力の鍛錬が競輪に役立つという意図もある。けれど、と八日市屋さんはこう続けた。

「純粋に息抜きしている瞬間は、1人でディズニーリゾートにいるときですね」

きっかけはダッフィー

 椅子から転げ落ちそうになった。八日市屋さんはれっきとしたプロアスリート。しかも、高校生の娘もいるアラフィフの既婚者だ。

「あそこは夢の国というだけあって、僕のようなごりごりのおじさんがダッフィーのぬいぐるみを抱えて1人で歩いていても受け入れてもらえるんです」

 一瞬、聞かなかったことにしようかと思ったが、好奇心がまさり、気づけば「どんな経緯で?」と身を乗り出していた。

「きっかけは十数年前に娘を初めてディズニーシーに連れて行った時です」

 その日は、ディズニーシーの人気キャラクター「ダッフィー」のぬいぐるみの発売日だった。八日市屋さんは人ごみが苦手で、列に並ぶのも大嫌いだった。しかし、娘のために2時間半並んで買い与えると、娘は「とんでもない素敵な笑顔」で迎えてくれた。こんなに喜んでくれるなら、と八日市屋さんはシーズンごとに発売されるダッフィーシリーズのグッズを購入するため、関東近辺のレースが終わった翌日に東京ディズニーリゾートに立ち寄るようになった。

「最初の頃は買ってすぐに退場していたんですが、1万円近い入場料を払ってすぐに出るのはもったいないと思うようになり、どれだけ楽しめるかなと。そこで持ち前の向上心がわいてきたんです」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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