「この数カ月でここまで成長できたのだから、パリまでの数カ月間ももっと努力できるし、もっと強くなることができるはず」

 オーストラリアで取り組むトレーニングの方向性は池江が目指すものと一致しているし、身体つきの変化からも池江にマッチしていることは証明された。

 目標に掲げる自己ベストである56秒08まで力を取り戻すには、前半、後半ともに0秒5前後の上乗せが必要だ。前半のスタートから浮き上がり、後半のラスト15mの失速。この修正しなければならない2カ所は、池江本人もよく分かっているし、名将ボールが見逃すはずはない。

 とはいえ、現実的にパリ五輪でのメダルは厳しいだろう。だが、五輪決勝の舞台で“競う”ことで、きっとその先の池江の成長を加速させてくれるはず。

 池江は、言った。「自分に負けずに頑張りたい」。その言葉通り、全力でやり抜いた池江のパリ五輪を見届けるのが楽しみだ。(文・田坂友暁)

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