猫写真家・沖昌之さんと「推し」のぬいぐるみ。「いい写真を撮ってもらえてよかったなぁ」と話しかけながら撮影は進んだ(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 仕事先にもプライベートにも、常にぬいぐるみを持ち歩いている男性を見かけるようになった。どんなところが魅力なのか、詳しく話を聞いてみた。AERA 2024年4月15日号より。

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 本誌で「今週のしゃあしゃあ」を連載中の猫写真家・沖昌之さん(46)は、実は大のぬいぐるみ好きだ。

「幼い頃から、べったりというわけではないんだけど、常にそばに誰かいた」

 と話す沖さん。記憶にある最初のぬいぐるみは、あらいぐまのラスカルだ。まだ小学校に入る前の幼い頃、七つ上の兄のために自宅にやってきたものの放置されていたラスカルとよく遊ぶようになったという。

 その次は、小学生の時に、三重県の鳥羽水族館で買ってもらったラッコのぬいぐるみが相棒に。中学生になると、ムーミンシリーズに登場するニョロニョロになり、その後しばらくして、クレーンゲームで取った少年アシベのゴマちゃんが最愛の存在になった。20代の頃は、ピングーの妹のピンガが好きになり、その次はミッフィー。そして30代に入った頃からは、リラックマがすぐそばにいるという。沖さんは、

「ずっと同じぬいぐるみと一緒に過ごしてきたわけではないけど、歴代の『推し』の多くは残してあって、自宅の押し入れで眠っています」

 と熱っぽく話してから、ふと我に返ったように、こう言った。

「なんか気持ち悪いこと言ってるのかもしれないな(笑)。いい年した大人の男がぬいぐるみなんて、と思いますよね……。でも、僕はぬいぐるみが好きなまま年を重ねてきました」

「卒業」せず大人に

 いえいえ、ぬいぐるみは幼い子どもだけのものではないし、ましてや女性だけのものでもないでしょう。

 でも、多くの人が「卒業」していく(ように見えている)ぬいぐるみを、ずっと愛し続ける人たちに何か共通点はあるのだろうか。

 著書に『人形メディア学講義』がある白百合女子大学の菊地浩平准教授(人形文化論)は、

「卒業した人たちは、興味関心が自然と他のことに向いたり、自分で卒業すると決断したりしているように見えますが、実際は親や周囲からの『まだそんなもの持ってるの?』というプレッシャーによって離れていくケースが多い。そのきっかけがない場合は、卒業という選択肢がないまま大人になるのです」

 と解説する。まさに、冒頭の沖さんは「家族にも友だちにも咎められたことがない」という人だ。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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