野手以上に球団にとってのリスクが大きいのが故障の多い投手との長期契約だ。先日も2022年から4年契約を結んでいる武田翔太(ソフトバンク)がトミー・ジョン手術を受けたことが発表され、復帰は早くても来シーズンとなった。過去を振り返ってみても、故障で期待通りの活躍ができなかった選手は圧倒的に投手の方が多い。
まず真っ先に思い出されるのがメジャーから復帰してソフトバンクに入団した時の松坂大輔だろう。2015年から3年12億円の大型契約を結んで入団したが、長年の疲労もあってか度重なる故障に見舞われて1年目は登板なしに終わる。2年目のシーズン最終戦でようやく先発したものの、1回を投げて5失点で降板。契約最終年の3年目も怪我の影響で二軍暮らしが続き、3年で一軍登板はわずか1試合に終わったのだ。その後は中日に移籍して6勝をマークしてカムバック賞を受賞しているだけに、ソフトバンクにとっては最も良くない時期に長期契約を結んでしまったと言えそうだ。
日本人選手ではないものの、同じソフトバンクではサファテもその例に当てはまる。2015年からは3年連続で最多セーブのタイトルを獲得し、2017年にはNPB記録となる54セーブをマークするなど活躍。そのこともあって、2018年のシーズン開幕直前に、翌年から3年総額約20億円で契約を延長した。しかしその年の開幕直後に股関節の故障で戦線を離脱してわずか6試合の登板に終わると、2019年からの3年間は二軍でも登板することができなかったのだ。前年までの活躍を見れば致し方ない部分はあるものの、完全な大型契約失敗の事例だったことは間違いない。
一方で大型契約を機に復活した例も存在している。柳田は2019年に怪我でわずか38試合の出場に終わったものの、オフに7年契約を締結すると、それ以降は4年連続でベストナインを受賞し、最多安打のタイトルも2度獲得。昨年は2014年以来となる全試合出場も達成している。契約内容も4年間は年俸固定で、それ以降の3年間は見直すという形となっており、昨年オフには最多安打のタイトルを獲得しながらもベースが高いということもあって5000万円減での契約更改となった(金額は推定)。宮崎も6年契約1年目の2022年も打率3割をクリアすると、2年目の昨年は開幕からヒットを量産し、自身6年ぶり2度目となる首位打者にも輝いた。2人ともまだ契約期間は残っているものの、十分な活躍だったと言えるだろう。