豊橋市内のスーパーから出る野菜くずなどで鶏を育て、自社の卵をまかなうことを計画中だ。講演を通じて親交のある九州産業大学の学生と鶏舎を見学する。(写真:今村拓馬)

 いまにつながるかもしれない体験は、保育園時代に起こった。

 夏目の父・忠男(85)は豊橋市の貧しい10人きょうだいの家庭に生まれ、中学卒業後すぐ上京し、縁あって国会議員の秘書を務めた。だが突然、「事務所の金を使い込んだ」という理由でクビを切られた。父によると大卒の秘書が増えるなか、中卒では格好が付かないというのが真の理由だったらしい。もちろん事実無根だが、父は黙って従うしかなかった。そんなある朝、夏目が保育園に行くと保育士の態度が違った。「あの親の子」という空気を感じ、露骨ないじめを受けるようになった。

「遠足に行って芝生の上でお弁当を食べていると、3、4人の保育士が前に立って見下ろしながら『おい、弁当まずそうだなあ』と言うんです。毎日、保育園で吐いていました。子どもだから反論できなかったけど、振り返るとこのときから理不尽なことや声なき声に敏感になったのかもしれない」

 その後、父は市議会議員に立候補し、2度目の挑戦で当選。以後、6期24年も務めることになる。夏目を愛情込めて「小僧」と呼ぶ忠男も言う。

「いまに見とれよ、という気持ちがありましたね。それを見とったんじゃないかな、小僧はね」

 負けん気の強さは父ゆずりだと夏目も認める。中学時代、背が小さいことでからかわれても「なにくそ」と思ってきた。が、決して正義感溢(あふ)れるヒーローなどではない。小2のとき障害のあるクラスメートをいじめる側に加担したことをいまも後悔している。小6のときひとりぼっちでいた転校生に、自分から声をかけにいく勇気はなかった。

 だが、大人には反旗を翻した。中1のとき音楽教師の怒り方を「それはおかしいと思う」と指摘し、以後3年間、通信簿に1をつけられた。ほかの教師に「内申点が足りず志望高校を受けられないから先生に謝ってこい」と言われても「本番で受かりますから」と突っぱね、見事に合格した。

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