「私たちのような活動は資金を使い切ったらそこで終わり。持続させるのが難しく、食べていけない。お金儲けの仕組み、政府や国連の意思決定など、自分が知らないことを勉強したいと思った」

 大学を1年間休学し、ニューヨークにあるビジネスの専門学校で学んだ。同時に、日本テレビのニューヨーク支局でインターンとして報道に携わった。折しも大統領選の真っただ中。ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが激しく争い、メキシコ国境の「壁」や銃規制などをめぐって社会が分断されていた。これを目の当たりにして、中村はある大きな学びを得る。

「二項対立で前進しても、誰も幸せにならない」

 帰国後、友人の清光陽介(32)が主宰する活動を手伝い、カンボジアへ派遣する学生インターンにメンターとして同行した。清光もそうだが、その周囲も皆、学生起業家だった。中村も「社会課題の解決に向き合う事業を自分もちゃんと考えよう」という気持ちが芽生えた。

 清光は出会った頃の中村について、こう語る。

「『どうしたら社会は理不尽じゃなくなるか、今よりも生きやすくなるか』と、いつも言っていた。社会を構造的にとらえる姿勢がすごいと思った」

 大学4年生のとき、中村は「社会課題にアクセスする若者を応援する」というコンセプトで、学生団体を立ち上げることにした。

「自分が直接アプローチするんじゃなくて解決してくれる人を増やすんだから、他力本願だよね」

 そう言うと、居酒屋で中村の話を聞いていた友人たちは「じゃあ、タリキでいいじゃん」。

(文中敬称略)(文・原賀真紀子)

※記事の続きはAERA 2024年4月8日号でご覧いただけます

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ