AERA 2024年4月8日号より

「柔軟に解釈して、支給量や支給するシーンを広げてほしいなと思います。それは自治体の役割です」(同)

子どもとしての発達・成長、普通の子と等しくある

 実は友岡さん自身、13トリソミーという染色体異常による障害がある娘の母親でもある。生まれてずっと入院していた娘が退院したのは生後10カ月だったが、1歳半の時には通信制大学に入学して、保育士の資格を取得した。重度の病気のある子どもたちにも遊びや保育の必要性を感じたからだ。

「医療的なケアがあると、やっぱり“医療の子”になりがちです。親は一生懸命ケアを覚えて、家でも病院と同じようなことをやって。命と向き合っているから、“育児”の感覚がどうしても薄れます。でも子どもとしての発達・成長は、普通の子と等しくあるんです。ただ、ちょっと気づきにくいだけ」

 子どもが子どもらしくいられて、安心してケアを任せられる人がいる、そんな場所を作りたいという思いが、オハナキッズの立ち上げにつながった。

 子どもたちの生活には医療・教育・福祉の三つの領域でサポートが必要だ、と友岡さんは強調する。

「飛び抜けて進歩した医療に続いて、福祉と教育がどれだけ追いついていけるか。追いついていけないと、いつまでも受け皿がないということになってしまいます」

 調査に携わった世田谷区に拠点のある昭和女子大学助教の八木良広さん(社会学)は、今後の動き次第でこの調査が持つ意義がより生かされていく、と期待を込める。

「支援法の成立はゴールではなく、法の理念を実現するための土壌が作られたのだと考えられます。医療的ケア児と家族それぞれが求める適切なサービスを受けられるよう、あらゆる主体が手を尽くしていく必要があります」

 どんなスペシャルな子であっても、その一人一人を「こどもまんなか」に置いて、適切な支援を。

「行政や、保健・医療、福祉、教育、産業、研究等に携わる私たちは、それぞれの持ち場でできることがたくさんあるはずです」(上別府圭子さん、国際医療福祉大学大学院教授=家族看護学)

(ライター・高橋有紀)

AERA 2024年4月8日号より抜粋

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