左の親子が友岡さんと娘の壽音(じゅの)ちゃん。新生児室でお友達と(写真:Ohana kids提供)
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 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童「医療的ケア児」。2021年9月に「医療的ケア児支援法」が施行され、各自治体による医療的ケア児への支援が「努力義務」から「責務」となった。それから2年半、新たな課題が浮かび上がってきた。医療的ケア児を取り巻く実態を調査した専門家らに聞いた。AERA 2024年4月8日号より。

【図表】退院直後の医療的ケア児と主介護者の1日のスケジュールはこちら

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 世田谷区で児童発達支援・放課後等デイサービスを運営するNPO法人オハナキッズ代表の友岡宏江さんは、放課後等デイサービスを運営する事業者の立場として、支援法施行で行政の理解や制度によるバックアップは進んだものの、当事者家族の実感との間には乖離があると見る。

「制度があっても実情と合っていないため、サービスが知られていない、満足に利用されていないままだ、と私は受け止めました」

 一例が、放課後等デイサービスのサービス提供時間について。サービス提供時間を午後5時から午後7時に延長することで支払われる報酬に都から加算がつくようになった。歓迎すべきことのようだが、現実的には、働き手の集まりにくい夕方の時間帯に保育士、看護師、訓練士など昼間と同じように人員を配置するには難しさがある。

「人材が確保できなかったり、確保できたとしても、人件費で赤字になることもあります。制度があってもうまく活用できていない、次の一歩が踏み出せないのが実情なんです」(友岡さん)

 さらに、地域格差の課題も指摘されている。障害福祉サービスは公費で助成されるが、その支給決定を行うのは各自治体だ。当事者が困っていると声をあげた時に、どれだけその子に合わせてカスタマイズできるか、自治体の裁量によるところが大きいのだ。

 例えば訪問看護師が自宅に来て家族に代わってケアをする医療的ケア児在宅レスパイト事業。家族以外がケアや見守りをすることで家族の負担軽減につながるものだが、東京都の中でも区によって自宅のみでしか使えない場合と、学校でも使える場合がある。

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