「脚本によって原作にどれだけ手を加えられるのかが気になるのであれば、契約内容に脚本承認権というものを入れるべきかと思います。脚本に納得できない場合、この一文があれば、漫画家は脚本を拒否できるそうです」

『テルマエ』の連載が終了してから11年目にあたる今年2月、集英社の「少年ジャンプ+」で「続テルマエ・ロマエ」の連載が始まった。今月にはコミックス第1巻も発売される。

「集英社に作品を移すことができたのは、今までの版元を離れ、仕事全般のマネジメントを請け負ってくれる会社に所属し、自分で出版社を選べる立場になったからです。私の状況は少し特殊ですが、漫画の未来を考えるための参考にはなるかと思います」

バランスを見直す時期

 今や日本の漫画は、世界中が欲しがるコンテンツ産業になっている。

「漫画は巨大な経済効果と影響力を生み出す日本の一大産業です。にもかかわらず、原作を扱う出版社や映像化に携わるメディアは漫画家に対し、『これで単行本が売れるのだから、余計な口出しはするな』的な、リスペクトを欠落させた姿勢を取っているように思います。創作に打ち込む作家も社会性を欠いていることはありますが、そこに付け込んだりせず、編集者には漫画家が良い漫画を描けるよう、しっかりと支えてほしい」とヤマザキさん。

「漫画家が弱い立場でも仕方がなかった一昔前とはわけが違います。漫画家があっての出版社であり、映像化。双方の関係性のバランス調整を見直す時期が来ていると思います」

(ライター・矢内裕子)

AERA 2024年4月8日号