それなりにいろいろあっても、結局のところ消化試合。それが朝ドラ最終回への道の宿命だと思っていた。「そうして、幸せに暮らしましたとさ」とヒロインの人生を終わらせることがお約束だから、と。
ところが「ブギウギ」のラスト2週は、「消化試合」ではなかった。スズ子(趣里)の人気低下という「負」の側面にスポットを当て、「引退」という結論がドラマを盛り上げた。長く働けば働くほどほめられる。そんな昨今の風潮にあらがうように、スパッと「引退」を決めたスズ子。これは問題提起なのか? そんなふうに見ていた。
引退の始まりは、水城アユミ(吉柳咲良)という新人歌手の台頭だった。その人気ぶりに「ブギはもう終わり」と雑誌は書く。しかも水城は、亡き大和礼子(蒼井優)の娘というサプライズ。絶妙な仕掛けに、「やるなー」と心が弾んだ。年末の「紅白」ならぬ「男女歌合戦」での水城&スズ子は圧巻で、「ブギウギ」のステージは花だったと思う。
きっかけは水城だが、引退の理由は他にある。それをスズ子はたくさん語った。つまりは「美学」の問題だった。が、最終回を見終えての結論は、ブギウギのクライマックスは「スズ子の弟・六郎とその死」だったということだ。そしてもう一つしみじみ思ったのは、「やはり、戦争だな」だった。これは「ブギウギ」にとどまらず、朝ドラの難しさを表していると思うのだが、まずはスズ子の引退から。
引退を決め、まず羽鳥(草彅剛)に報告する時、スズ子はこう言った。「ワテは年末の歌合戦で、燃え尽きたと思いますねん」「多分、もうこんなふうには歌われへん気がするんです」。引退発表の記者会見では、「まだ歌おうと思えば歌えますし、踊ろうと思えば踊れますけど」と言ってから、こう言った。「お客さんにも喜んでもらえて、自分自身も満足できる福来スズ子でいることが、もう難しいようになってきたいうのが一番の理由ですわ」。そう、晩年をどう見せるか。そういう美学の話なのだ。