彼によれば、本当に強い数字を持つのは、17年の安室奈美恵(引退前のラスト出場)や18年の米津玄師(テレビ初出演)20年のGReeeeN(変則的ながらもテレビ初顔出し)嵐(この日で活動休止)LiSA(「鬼滅の刃」絡みの大ブレーク)といったもの。昨年においても、サプライズ性とブレーク感を示せた藤井風やYOASOBIはまずまずだったという。

 にもかかわらず、80年代にこだわるしかないようにも見える今年の「紅白」。昨年以上のヒット曲不足で、ない袖は振れぬというヤツだろうが、今よりはスムーズに「紅白」らしいものが作れた時代への郷愁も働いているのかもしれない。

 とはいえ、当時と似た顔ぶれをそろえても、40年もの歳月がたっている。2022年に、それを見たい人がどれだけいるかは疑わしい。そんななか、年内いっぱいで活動を休止する氷川きよしを使って、84年の都はるみみたいな演出をすることも可能なことが、救いといえば救いだろうか。

 個人的には、80年代の音楽、特にアイドルには思い入れがある。ただ、その分、限界もわかっているつもりなので「紅白」復活の起爆剤とまではいかないのでは、というのが本音だ。

 もし80年代にこだわった「紅白」が実現した場合、そこそこに盛り上がってくれることを願うばかりである。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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