80年代アイドルブームを牽引した小泉今日子
80年代アイドルブームを牽引した小泉今日子

 ある意味、苦肉の策だったが、翌年にはさだまさし、サザンオールスターズ、ゴダイゴが登場。「紅白」が誰より出したかったとされるアリスには何度も拒否されたものの、のちには谷村新司や堀内孝雄も常連になっていく。それはこうした努力が実を結んだということでもある。

 そうこうするうち、80年にアイドルブームが再来。しかも、この時期は演歌もまだまだ強かった。おかげで、アイドルに演歌、ニューミュージックが一堂に集い、その年のヒット曲で競い合うような「紅白」が実現したわけだ。

 なかでも、奇跡的な盛り上がりを見せたのが84年だった。

 序盤にシブがき隊、早見優、堀ちえみという82年組アイドルが新鮮さを添え、寿引退が決まっていた高田みづえが最後の花道を飾る。

 中盤には、明菜とマッチ、聖子と郷ひろみが続けて出てきて、4人でダンスまで踊った。熱愛中のビッグカップルたちにそこまでやらせた「紅白」もすごいが、リクエストに応えた4人も立派なものだ。

 その直後には、細川たかしと水前寺清子による「浪花節だよ人生は」対決。そういえば、複数の歌手による競作ヒットというのも最近ではめったにない。

 さらに、小泉今日子とチェッカーズが対決したかと思えば、ソロとして初出場の高橋真梨子が「桃色吐息」を歌った。ニューミュージックから常連組になったひとりだ。

 終盤ではまず、森昌子。披露した「涙雪」は「紅白」史上初めての秋元康作品でもある。白組のトリとトリ前は五木ひろしと森進一。歌われた「長良川艶歌」と「北の蛍」はこの年のちゃんとしたヒット曲だ。

 そして何より、大トリが引退(のち復帰)を決めていた都はるみだった。これが最後のステージになるということで、白組司会の鈴木健二がアンコール歌唱を説得。

「私に1分間、時間をください」

 と言い出して会場が興奮状態になるなか、総合司会の生方恵一が「改めてミソラ、あっ都さんに拍手を」という歴史的失言をした。

 そんなこんなで、視聴率は78.1%を記録。前年から約4%アップして、72年以来の80%超えも夢ではないところまで戻ったのである。

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番組を維持すること自体が困難